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最高裁判所大法廷 昭和24年(れ)1428号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

被告人の上告趣意について。

論旨は、要するに原審の事実認定を争い、本件賍物罪について、被告人は、賍物たるの情を知らなかったのであるから、無罪であると主張するのであるが、かかる主張は、上告の適法な理由とすることはできない。

弁護人田野井子之吉の上告趣意第一点について。

(一)原判決が証拠とした司法警察官の被告人訊問調書中の被告人の供述が、所論のように強制にもとづくものであるという証跡は、本件において認めることはできない。(原審において、被告人側から右のような主張のなされた形跡もない。)

(二)被告人の申請した証人訊問を採用するかしないかは事実審たる原審に任されているところである。原審はその裁量にもとづき右証人の訊問を必要のないものとして、申請を却下したのであって所論のような違法は認められない。

(三)賍物罪において、本件のように寄蔵、牙保等の客観的事実が他の証拠によって確認される以上、賍物たるの情を知っていたかどうかに関する事実は、たとえこれを認める直接の証拠は、司法警察官に対する被告人の自白のみであっても、結局、如上各証拠を総合して、犯罪事実の全部が認められるかぎり、刑訴応急措置法一〇条三項にも、憲法三八条三項にも違反するものでないこと、しかして、右客観的事実に対する証拠が被告人の原審公判廷における自白であってもその理は同一であることは当裁判所の判例の示すところである。

(昭和二四年(れ)第八二九号同二五年一一月二九日大法廷判決)されば論旨は理由がない。

同第二点について。

被告人は、被害者に返す目的で所論賍物を保管していたのであるという事実は、原判決の認定しないところであって、この事実を前提とする論旨はすべて採用の限りでない。又司法警察官の訊問調書について、所論のような理由でその証拠能力を否定すべき法律上の根拠はないのであるから、この点に関する論旨も採用することはできない。

よって、旧刑訴四四六条に従い主文のとおり判決する。

右は裁判官塚崎直義、沢田竹治郎 井上登、小谷勝重、島保、穂積重遠を除く他の裁判官の一致した意見である。裁判官塚崎直義、沢田竹治郎、井上登、小谷勝重、島保、穂積重遠の少数意見並に裁判官真野毅、斎藤悠輔の補足意見は前記大法廷判決並に同判決引用の大法廷判決に記載のとおりである。

(裁判長裁判官 田中耕太郎、裁判官 塚崎直義 裁判官 長谷川太一郎 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 霜山精一 裁判官 井上 登 裁判官 真野 毅 裁判官 小谷勝重 裁判官 島 保 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 岩松三郎 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

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